2009年1月7日水曜日

独り言、プレカット勤務の頃

あるプレカット工場の創世記を一緒にすごした仲間が、亡くなった。くも膜下出血だから、予防も前触れもない。交通事故みたいな物だ、と医者は言った。

初めの頃。”プレカット工場を始めるのだけれども、やってみないか。” 昔の上司に久しぶりに声を掛けられた。木材業界では最先端のCAD/CAMを駆使した部材加工で、話しには聞いていたし、工場見学にも行っていた。設備装置やコンピューターには関心があった、しかし、建築は全く知らなかった、木材を扱ってたのにね。

”プレカット工場はたくさんできたし、飽和状態でうまく行かないからやめなさい。” 会う人誰もに言われた。だから、初期のメンバーは親会社の出向扱いだった。”わるいくじを引いたね、かわいそうに”。 プレカット担当になった人は皆から同情されていた。そのわけは、今でも私は判らない。だって、顧客業者にアンケートをしたら要望が多かったので踏み切った、と聞いていたからだ。

プレカット工場には、入力作業、部材を扱う工場作業、それをサポートする大工が必要だった。プレカットとは大工の仕事をするのだ。大工が家を建てるときの”構造部材の刻み”を機械が代わって行う。木造建築の組み方法は、立体パズルのごとく、木を凹凸に削ってはめ合わせるのだ。間取り図面をコンピューターに入れて、はめ合わせは機械が当てはめる。しかし、構造体や部材の割り振り、配置は人が決める。建築を判っている人が決めていく。それは、設計士であり、あるいは大工のことなのだ。

プレカット工場を始めるに当たり、大工を募集した。先輩曰く、”大工が多いと振り回されて仕事にならないから一人で良いよ”。プレカットは大工仕事を機械にさせるときに、かなり仕事を間引いているのだ。代わりにしっかりと強度試験データを握っている。それが効率化、無駄を省き、スピードアップの方法なのだ。大工のように、”見せるほどの技”は持っていないのだ。

募集した大工(A)さんが来た。しかし、年齢なのか途中で気が変わったらしく、取り消すと言ってきた。そして彼(B)が来た。陽気でおおざっぱな彼は精力的にあれこれと指示し、みんなを引っ張ってプレカットの準備を始めた。彼以外、プレカットの何たらを知る人はいなかったのだ。その後Aさんも結局仕事がしたくてプレカットに入ってきた。2人の大工さんは、よく仕事をしてくれた。職人さんだから終わるまでやめれない、ことを判っていてくれた。

”新しいプレカット工場なんて長いこと保たないよ、仕事もないし、工場は多いし、すぐにつぶれるよ、” と言われながらプレカットは稼働開始した。”いつまで保つかわからない”、 というつもりだったから、やれるところまでやる。もし、うまく行かなくなったときにでも、”あれ以上は仕方がないよね”、と言われるくらいやりたかった。背水の陣はちょっとオーバーかな。わたしもサラリーマンから遠かったので、仕事がはあるうちはやる、終わるまでやって無くなったら休む。大工さん2人はとても良く動いてしてくれて、1日何時間でも文句なく、仕事をこなしてくれた。大変なときも余裕があるかのように、慌ただしく時間が過ぎていった。気の済むまで仕事が出来て、それは、この先輩達に負うところが大きい。

”素人が始めた大工仕事”、で、ミスが多く、営業や取り巻きを初めみんなに多大な迷惑を掛けた。しかし、叱られてもどこがどう違っていて、何を怒られているのか判らない状態なのだ。仕事を誤った現場へ行ってリカバーするのが、その彼と私の仕事だった。昼は工場で、夜は現場へ材を持って、鋸とノミをもって出掛けた。夜の7,8時から出掛けて、11,12時に帰ってきた。連日そんなんだった。営業のご苦労で悪評判の割には毎月仕事は増えた。

モチベーションを上げていたい、これは私の望みであり、信念。自分のモチベーションは別として。愚痴や文句の少ない人は本当に心強くありがたいものだ。”励まし上手になりたい”、いつごろからか、そう思っている。私の愚痴や泣き言を聞いてくれた一部の人、とても感謝している。たくさん走った頃。長くて短い1日の頃。いつまで続くのだろうと言いながら、もう10年を過ぎてしまった。

2 件のコメント:

Dr.kuma さんのコメント...

新しい仕事の立ち上げは 本道だけでなく脇道から支える人が大事と解かる経済小説のように読ませていただきました。逝った方の哀悼の文章でしょうが、A氏の慎重さ、B氏の豪胆さで本道でない手直しに出かけリカバーするところが手に取るようにみえました。たぶんA,B氏どちらか一方なら現在が無かったかもしれませんね。外から読むと糾える縄のような、人的繫がりがおおきな事業が見えてきますね。

まえい さんのコメント...

残念ですね。私も大工をしていたので、気持ちは良くわかります。昔の元気のある日本が懐かしいです。